防災や節電でニーズ増大 家庭用蓄電池はもはや必須品?

家庭用蓄電池は、太陽光発電で発電された電気を貯めておくことができるため、災害時にも役立つと注目されています。以前は、蓄電池のあるご家庭は珍しかったのですが、今、そのニーズが増大しています。
しかし、設置費用がまだまだ高いことや、補助金のことなどがよくわからないからという理由で、導入をためらっている方も多いと思います。
ここでは、この先、蓄電池は必需品となっていくのか、購入するタイミングは何時がベストなのかなど、家庭用蓄電池の今と将来を解説していきます。

蓄電池はどのくらい売れているの?

2011年度の蓄電池の出荷台数は、わずか2000台弱でした。そして、2020年度には約12.7万台(日本電機工業会「JEMA蓄電システム自主統計2020年度出荷実績」)にまで増えてきました。この数字には、家庭用だけでなく商業・産業用も含まれていますが、その中で約90%が10kWh未満の蓄電池でしたので、その多くは家庭用だったと思われます。
しかし、2019年度の新築住宅の着工数に占める蓄電池の導入割合は約9%(経済産業省「定置用蓄電システム普及拡大検討会 第4回」)。まだまだ蓄電池を設置しているご家庭は、一部にすぎませんが、今後は、蓄電池は私たちの暮らしに不可欠な設備になると考えられています。

太陽光発電などの固定価格買取の優遇期間終了の影響で需要が伸びる

蓄電池が大きく普及し始めた要因は、「卒FIT需要」にあると考えられています。「FIT」とは、政府が太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの普及拡大を目指してスタートさせた「固定価格買取制度」のことです。この制度は2009年から始まっており、優遇買取期間が10年間と設定されているため、2019年から最初の満了者が出てきています。
FIT制度の期間が終わると買取価格が大きく下がってしまうため、その余剰電力を蓄電池に蓄積しておいて活用しようという動きが出てきています。

家庭用蓄電池は災害対策や光熱費削減効果でも注目されつつある

FITの固定価格買取制度による買取価格は、年々低下しており太陽光で発電した電力を買い取ってもらうメリットは少なくなってきています。
しかし今日では、買取価格とは別に、家庭用蓄電池は、災害対策としても注目されています。
2019年の台風19号の被害により千葉県内で大規模な停電が起こり、厳しい残暑のなかで約1週間もエアコンが使えなくなったというニュースが流れました。このため、災害対策として家庭用蓄電池を導入しようと検討するご家庭が増えたといわれています。
家庭用蓄電池が設置してあれば、停電の時でもしばらくは電気を使うことができます。また、太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせれば、停電時だけでなく、天気の良い昼間の間に発電した電力を蓄電池に貯めておくことができます。この電力を夜間や雨の日に使うこともでき、光熱費を削減できます。また、電気料金の安い深夜電力を蓄電池に貯めておいて、料金の高くなる日中に使うことで電気代を節約することもできます。
原油価格の高騰で、電気料金が高くなっていることもあり、こうした家庭用蓄電池のメリットに注目が集まっています。

蓄電池のタイプや用途、予算などを考えて最適な蓄電池選びを

家庭用蓄電池には、家中の電気製品に使える「全負荷型」と、リビングなど特定の場所だけに使える「特定負荷型」があります。最近は、蓄電容量が10kWh前後の大容量の「全負荷型」が売れています。
次に選択の基準として200Vに対応した仕様であるかがあります。テレビやドライヤーなど一般的な家電は100Vですが、一部のエアコンやIHクッキングヒーターは200Vとなっています。200Vの家電を使いたいのであれば、200Vに対応した蓄電池を選んでおいた方が良いでしょう。
4人家族のご家庭では、平均で1日13.1kWの電力を消費しているといわれています。したがって、13kWの蓄電池であれば、停電の時も蓄電池だけで1日間は普段通りに電気が使えることになります。
さらに、「出力」性能も使い勝手に影響してきます。出力が小さい場合は、200Vに対応した蓄電池であっても、エアコンとIHクッキングヒーターを同時に使うことはできないので、注意が必要です。
「全負荷型」か「特定負荷型」か、また「蓄電容量」はどのくらい欲しいか、200V対応か、出力は…などが選択の基準となります。しかし、いずれもこうした性能は価格に反映されていますので、用途や予算に応じて決めていくのがベストです。

年々下がってきている蓄電池の販売価格

それでは、現在の蓄電池の価格はどのくらいなのでしょうか。もちろん、メーカーや容量などによって価格に差がありますが、経済産業省の発表によれば、2019年度の家庭用蓄電池は1kWh当たり14.0万円(工事費を除く)だということです。これは2015年度と比較すると約36%のダウンです。
国としては、さらに価格を下げるように指導しており、2030年には工事費を含めて7万円/kWhを目指しているとのことです。

家庭用蓄電池の販売価格が下がっているのには、2つの理由があります。それは、国が「目標価格」を定めているのとメーカー間で価格競争が起きているためです。

・目標価格

「目標価格」とは、国が家庭用蓄電池の補助金を受けるための条件として決めた価格のことです。目標価格は年々下がっており、これと連動して家庭用蓄電システムの販売価格も下がっています。例えば、補助金を受けるための2019年度の目標価格は1kWh当たり187,000円でしたが、2021年度は165,000円とするように指示が出されています。(2021年度は予算に到達したため補助金の受付は終了しています)

・価格競争

蓄電池の中でもっともよく売れているのはリチウムイオン蓄電池ですが、この生産技術が向上し、蓄電池本体の生産コストが下がってきています。このため、各メーカーでは少しでも多くの蓄電池を販売しようと価格競争が起こっているのです。

太陽光発電との組み合わせで、今後も蓄電池の需要が増大

先ほどもご説明しましたが、太陽光発電には有利な固定価格買取制度がありましたが、そのメリットは徐々に薄れてきています。
一つは、固定価格買取制度の年限が終了したご家庭では、各電力会社によって多少の違いはありますが1kWhあたり7~9円にまで大きく買取価格が下がってしまっています。
そこで、発電した電力を売るよりも、蓄電池に貯めておいて自家消費に回した方が有利ではないかという発想が生まれてきたのです。

家庭用蓄電池に太陽光発電で生み出された電気を貯めておけば、天候によって太陽光発電の発電量が低下しても、電力会社から電気を買う必要がなく電気代が節約できます。今後は、この電力の自家消費の動きもますます高まると予想されています。
さらに、今後は、地球温暖化防止に向けて脱炭素化が進んでいくなかで、太陽光発電+蓄電池は1住戸1セットが必須となってくると思われます。
まずは、今ご自宅で停電が起こった際に、どのような家庭用蓄電池があればいいのか。そして、太陽光発電システムと併用した場合のトータルの導入費用はどうなのか。など、さまざまな角度から検討されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

蓄電池の販売価格は、政府の指導もあって、年々下がっています。また、天候によって発電量が左右されてしまう太陽光発電システムを補完する意味からも、蓄電池に注目が集まっています。
SDGsや地球温暖化防止の取り組みからも、太陽光発電+蓄電池の需要はますます増大していくものと思われます。
来年度の補助金情報も気になるところですが、新築やリフォームのタイミングをみて、家庭用蓄電池の導入も検討されていったらいかがでしょうか。


[参照URL]
SUUMOジャーナル / エコの王様

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