新型コロナウイルス対策として部屋の換気は大切です。厚生労働省も「季節を問わず、新型コロナウイルス対策には、こまめな換気が重要です。しかし、冬本番を迎え、寒さと換気に折り合いがつかないことが多いと思います。室温が下がりすぎないよう、上手に換気に取り組む必要があります。」とのコメントを発表しています。
しかし、必要だとはわかっていても寒い冬には換気もつい怠りがちになり、換気の回数も減ってしまいます。また、換気の方法が適切でないために、せっかくの換気の効果が薄まってしまっているという場合もあります。ここでは、効果的な換気の方法や適切な換気の回数、時間などについてご紹介していきます。
最近の住宅事情から、高まっている換気の必要性
伝統的な日本家屋では、木材やふすま障子、土壁、畳など自然を活かした素材が使われていました。そして、高温多湿な日本の気候に適応して、通気性にも優れた構造になっていました。しかし、その反面、冷暖房の効き目が悪いというデメリットもありました。
近年の日本の住宅は、コンクリートや合板、アルミサッシ、フローリングなどが使われており、気密性に優れた住宅になっています。このため、冷暖房の効果も高く、省エネルギー性にも優れています。
その反面、この気密性の高さが、汚れた空気を室内にとどめてしまうというデメリットも生じてしまっているのです。最近の住宅では、自然な換気は望めないため、意識して換気を進めていく必要があります。
正しい換気の時間や回数は?
・24時間換気システムだけでは不十分なの?
2003年7月に、すべての建造物に24時間換気システムを設置することが原則として義務付けられました。このため、ご自宅に設置されている方も多いのではないでしょうか。
24時間換気の仕組みは、リビングや個室にある給気口によって外気を取り込み、部屋の空気を洗面所やトイレにある天井排気口から外に排出し、空気を入れ替えるというものです。建築基準法では、1時間で部屋全体の空気の半分以上が入れ替わっていることが必要と定められています。
しかし、こまめに換気するためには、24時間換気システムだけに頼るのではなく、窓の開閉による換気を併用することがオススメです。
・窓の開閉による換気は、1時間に何回くらい行えばいいの?
厚生労働省のパンフレットでは、換気のためには「毎時2回以上(30分に一回以上)、数分間程度、窓を全開にすること」と表記されています。
厳密にいえば、換気の回数は、その部屋の容積とその部屋に何人いるかで計算することができます。
[窓による換気回数の求め方]
(1) まず、「その部屋にいる人数」「その部屋の面積」「その部屋の高さ」を把握します。
人数については数えれば分かりますが、部屋の面積や高さは分からない方も多いと思いますので、下記に一般的な部屋の面積と高さをまとめました。
[引用元]
フクマネ不動産「1帖(1畳)の広さ・サイズってどのくらい?何平米?」
オウチーノニュース「【マンション探し】理想的な天井の高さ?天井高ければいいってもんじゃない件」
コスモ建設株式会社「一戸建ての天井の高さ、理想は結局何センチ?」
(2) 次に、その部屋では1時間にどのくらいの換気量が必要なのかを計算します。
(計算式)
必要換気量(㎥/h)=20×居室の床面積(㎡)÷1人当たりの占有面積(㎡)
※「20」は20(1㎥/h×1人)の意味で、これは成人男子が静かに座っているときの二酸化炭素排出量に基づいた必要換気量です。
※1人当りの占有面積が10(㎡)を越える場合は、10(㎡)にしてください。
(3) 上の(2)で計算した必要換気量から必要な換気回数を計算します。
空気は部屋全体に漂っているものです。部屋をコップに見立て、その中に空気が満たされているとイメージしてください。その空気を入れ替えるわけですから、(2)で計算した必要換気量を部屋の容積で割っていきます。
(計算式)
必要換気回数=必要換気量÷部屋の容積(部屋の床面積×高さ)
上記の計算例では、
必要換気回数=80÷(12.96㎡×2.4m=31.104)
となります。
これを計算すると、必要換気回数は2.572…となります。計算結果から、1時間におよそ2.5回の換気が必要だということが分かります。
・1回の換気時間はどのくらいが適切なの?
換気の時間については、1時間あたり5~10分程度が目安になるといわれています。また、1回で10分間の換気をするよりも、こまめに5分の換気を2回行う方が効果的だとされています。
ただし、ここで示されている換気時間は、正しい方法で換気を行い、部屋の空気が入れ替わっているという前提で計算されています。
冬に効率的に換気をするコツとは?
換気の必要性は分かっていても、冬場は、換気がおっくうになってしまいます。部屋がせっかく温まっているのに、冷たい外の空気を室内に入れて換気をするということには少し抵抗があります。
実際、ある調査によれば「冬に窓開け換気をしたくない理由」のトップは「部屋が寒くなってしまう」が約80%、次に「暖房の電気代が高くなってしまう」が44%でした(複数回答)。
この調査からも、冬に窓開け換気をしたくない大きな理由が「寒い」「暖房費がかさむ」ということが分かります。しかし、新型コロナウイルス感染症の対策としても換気は不可欠です。また、冬は外気と室温との差が大きいことから、換気をしないと結露やカビの発生の原因ともなってしまいます。
そこで、ここでは「寒い」「暖房費がかさむ」などのデメリットをできる限り抑えることのできる、冬場の換気のコツをご紹介します。
[コツその1] 事前に部屋を温かくしておく
換気をする前に暖房を入れて、できるだけ部屋を暖かくしておきます。換気によって、部屋の温度は下がってしまいますが、事前に暖房を入れて床や天井、壁を温めておくことで、部屋全体の温度は下がりにくくなります。
[コツその2] エアコンは切らずに、エアコンから遠い窓を開けて換気する
エアコンは、電源を入れたり切ったりする際に大きな電力を使うので、換気の時にもエアコンは切らない方が経済的です。また、エアコンの近くの窓を開けてしまうと、その窓から暖かい空気が出ていってしまうので、なるべくエアコンから遠い窓を開けてください。
換気をして部屋に冷たい空気を入れるとエアコンは温度を上げようとするので、あらかじめ低めに温度設定をしておいてください。
なお、ほとんどのエアコンは、外から空気を入れているわけではなく、部屋の空気を取り入れて暖めているので、エアコンだけでは換気はできません。
[コツその3] 短時間の換気をこまめに行う
冬場は、夏と比べて室温と外気温との差が大きいため、窓を開けることで自然に空気が対流し、循環してくれます。そのため、夏よりは短い時間でも必要量の換気を行うことができます。部屋の広さにもよりますが、5分ほどの短めの時間でこまめに換気するようにしましょう。
[コツその4] 日中、なるべく日差しを取り入れておく
冬場は、夏に比べて日照時間が短いのですが、日差しの角度が30度ほどあます。そのため、窓から入った日差しは、より部屋の奥まで届きやすくなっています。冬の日差しは、1m2当たり約780ワットで、1間(約1.8m)四方の窓から入る日差しは。約2キロワットの暖房器具にも相当します。昼間は、積極的にカーテンを開けて太陽の日差しを取り込み、部屋を暖めておけば、換気による暖房費のロスも少なくなります。
まとめ
ここでは、特に冬場の効率的な換気についてご紹介しました。換気は、基本的には1時間に2回程度、5~10分が目安ですが、冬の寒い時期は、5分以内であっても、こまめに何回も窓を開けて換気することが効果的です。こうすることで、暖房費のロスを防ぐこともできます。
窓を開けるときには、対角線上に2か所開ける、窓が2か所ない場合には換気扇・扇風機・サーキュレーターなどを使うなどして、効率的で経済的な換気を心がけてください。
なお、上手な換気の方法(空気の通し方)については、弊社Webサイトの「耳寄り情報」2021年07月14日(水) 「部屋の風通しを工夫して、暑い夏を涼しく過ごしましょう」でもご紹介しています。併せて、ご参照ください。
[参照URL] ナノクロシステム株式会社 / 小田急不動産 / NHK