ZEH住宅とは何でしょう 8年後にはZEHが最低の省エネ基準に?

最近、「ZEH(ゼッチ)」という新たな住まいの形が注目されています。このZEHとは、どのようことなのでしょうか。
そして、住まいにZEHを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、導入にあたっての注意点は?
ZEHは環境に優しいだけでなく、快適で安心な住環境の実現も期待できる住宅として評価されており、国内のエネルギー問題を改善するために現在、国をあげて取り組んでいる政策のひとつでもあります。政府は、2050年までにゼロカーボンを目指して、2030年つまり8年後までの削減目標を定めています。こうしたZEH住宅が求められる背景についてもご説明します。

ZEHとは何?ZEHの条件とは?

ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語です。住まいの断熱性能や省エネ性能を向上させるとともに、太陽光発電などによって生活に必要なエネルギーをつくり出すことで、年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)をおおむねゼロ以下にできる住宅のことを指しています。ここでは、ZEH住宅の条件について見ていきましょう。

・ZEHとして満たすべき条件

ZEHを満たすためには、「断熱性能」「省エネ性能」「創エネ」の3つの要素が必要です。それぞれにクリアすべき基準が設定されていますので、ご紹介します。

[断熱性能]

断熱性能とは、室内外に熱を伝えにくくする性能のことです。断熱性能に優れた住宅は、夏の熱い外気を室内に伝えず、また冬の室内の温かさを外に逃さないため、冷暖房費を削減しながら年中快適に過ごすことができます。
断熱性能は「UA値(外皮平均熱貫流率)」という指標で表されます。ZEHの基準では、このUA値を0.4〜0.6[W/㎡K]以下という低い値でクリアすることが求められています。

[省エネ性能]

ZEHでは、住宅に省エネルギー効果の高い機器・設備を導入することによって、一次エネルギーの消費量を従来よりも20%以上削減することが求められています。特に、エネルギー消費量の大きな「空調」「照明」「給湯」「換気」の4項目については、ZEH基準を満たした機器を使用する必要があります。

[創エネ]

創エネとは、エネルギーを創り出すことです。ZEH住宅では、太陽光発電をメインとして家庭用燃料電池や蓄電池なども組み合わせて導入しています。これにより、日常的なエネルギー消費を賄うだけでなく、災害時のエネルギー補充にも役立てることができます。

ZEHに準ずるNearly ZEHについて

東京などの都心部で住宅を建てるときには、狭小地で床面積や屋根面積が十分に取れず、また、日照時間も確保しづらいケースもあります。そうした立地では、思うように太陽光システムが導入できません。そこで、年間の一次消費エネルギー量が概ねゼロ以下とならなくても、次善の策として、数値を緩和して評価しようとするのがNearly ZEHです。具体的には、ZEHが100%以上の一次消費エネルギー削減を基準としているのに対して、Nearly ZEHでは75%〜100%の削減を基準としています。

ZEHの普及に向けた取り組みの背景とは?

政府がZEHの取り組みを推進している背景には、日本国内の深刻なエネルギー問題があります。日本では、消費しているエネルギーのほとんどを輸入に頼っています。そんな中で、2011年に発災した東日本大震災では、原子力発電所の事故が発生し、深刻な電力不足に陥ってしまいました。もともと災害の多い日本にとって、エネルギー自給率が低いことは大きな課題でした。災害の度に国内のエネルギー生産が間に合わなくなり、エネルギー供給が不安定になってしまう危険性があるからです。
そこで、日本では、エネルギー需給のバランスを改善させるためにも、個々の住宅での省エネルギー・創エネルギー化が、最重要課題のひとつとなっています。ZEHの普及によって、エネルギーの需給構造が改善していくものと期待されているのです。

ZEH導入のメリット

ZEHの導入にともなう5つのメリットについてご紹介します。

(1) 健康への好影響

ZEHにより断熱性能の高くなった住まいは、住宅内での居室間の温度差を小さく抑えることができます。このため、住宅内のどこに行っても体温調整や血圧変動の幅が少なくなり、ヒートショックを防止できます。また、体調の改善も期待できます。

(2) 光熱費が削減できる

断熱性能が高い住まいは、冷暖房の機器をあまり使用しなくても一年中、快適な室温が保たれています。そのため、特に、夏や冬には光熱費が大幅に削減できます。

(3) 災害時でも安心

太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、日中はもちろん、夜間や災害等による停電時にも、蓄えたエネルギーで生活に必要な電気を得ることができます。

(4) 自然を感じる住まいに

高い断熱性能により住まいの設計にも自由度が増します。窓を大きく開けたり、適度に外気を取り入れたり、光や風、太陽などをより感じられる快適な住まいが実現できます。

(5) 住宅の価値が向上する

2016年から、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)が施行されています。これは、住宅のエネルギー性能を評価したもので、住宅の資産価値をも左右する指標です。BELSは、1~5つの星で表されますが、ZEHでは星4~5の高い評価を得ることができます。

ZEH導入の注意点

ZEHを導入するには、いくつか注意点もあります。

・建設費用が高くなる

ZEHの条件を満たすためには、その基準をクリアした設備が必要となります。高性能な建材や太陽光パネル、蓄電池、エアコンなどの電気機器が求められています。それぞれにコストがかかってくるため、どうしても全体の建築費用が高くなってしまいます。

・すべてをゼロにできるわけではない

ZEH住宅とは、「年間の一次消費エネルギー量を概ねゼロ以下にする住宅のこと」と定義されています。しかし、これは家で消費する総エネルギー量を「ゼロ」にできるという意味ではありません。ZEHでは空調・給湯・照明・換気などにかかる「一次消費エネルギー」を「ゼロ」にするということで、その他の家電消費分は含まれていません。
太陽光発電や蓄電池によって住宅の全ての消費エネルギーを賄おうとする場合には、「一次消費エネルギー」だけでなく、住宅全体の消費エネルギー量を想定しておく必要があります。

・その年の補助金の支給項目や金額に注意

ZEH導入の際には国から補助金が支給されますが、支給項目や金額はその年によって変化しているのが実情です。
2022年度(令和4年度)は、「地域脱炭素ロードマップの実践」の政策の中で、戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業として予算が計上されています。しかし、これは2022年度単年のもので、毎年、制度や補助金額は変わっていきます。
特に、政府は2030年までの達成目標を掲げているため、その前後で補助金支給がなくなる可能性もあります。ZEHの導入前には、必ずその年の補助金支給状況を確認してください。

政府が定めているZEH普及の目標は?

政府はZEHの普及について、次のような目標を設定しています。
・「住宅については、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」(エネルギー基本計画
・「2030 年までに新築住宅・建築物について平均で ZEH・ZEB 相当となることを目指す」(未来投資戦略2017
このように、政府目標では、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すなど、ZEH普及の取り組みを早急に進めようとしていることが分かります。これを受けて、ZEHに対する積極的な取り組みを表明するハウスメーカーや工務店が増えてきています。

まとめ

ZEHを導入することで、快適な住まいを実現できるだけでなく、環境に配慮した安全な住環境を創り出すことができます。特に、災害の多い日本では、万一の場合でも、住宅ごとにエネルギーを創り出せるということが大きなポイントです。
今後、住宅の新築やリフォームを計画されている方は、ぜひ、ZEHの導入を意識しておいてください。ただし、ZEHの取り組みは始まったばかりで、補助金なども今後変更される可能性があります。ZEHの導入を計画されている方は、ぜひ、最新の情報をチェックしておいてください。



[参照URL] エネチェンジ

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